何を読んでも何かを思いだす

人生の半分はフィクションでできている。

アメリカに行きたかったころ

先日、46年続いたクイズ番組『アタック25』が終了した。 大人になってからはあまり見る機会がなかったが、10代の頃はわりとよく見ていたと思う。 昔(70年代後半から80年代)はこういう視聴者参加型のクイズ番組がけっこうあって、子どもには難しいところも…

家族のいる俳句

以前、ちょっとした調べ物をしているときに安住敦という俳人のこんな俳句を見つけた。 啓蟄や書肆二三件梯子して 「啓蟄」は春の季語で、要するに、春の日に本屋を2、3軒梯子したというそれだけの句なのだが、これがなぜか妙に印象に残った。 なんというか、…

コンビニコミック

先日、コンビニで漫画のラックを見てちょっと驚いた。 『ワンピース』のコンビニ版(廉価のペーパーバック)が出ていたのだ。 もちろん『ワンピース』は現在も連載中の人気漫画である。普通のコミックス(単行本)もまだ生きているはずだ。それなのに(初期…

森へ行きましょう

ちょっと調べたいことがあって、黒岩比佐子『古書の森 逍遥ーー明治・大正・昭和の愛しき雑書たち』(工作舎、2010)をパラパラめくっていたら、読むのをやめられなくなった。 黒岩さんは、ちょっと変わった切り口で明治や大正の人や文化を紹介するノンフィ…

なんでも煮てやろう

冷蔵庫の豆腐が消費期限間近だったので、冷凍しておいた牛肉と合わせて「肉豆腐」をつくることにする。 ベースの煮汁は例によって「めんつゆ」でつくり、やはり冷蔵庫にあった玉ねぎ(半分)とえのきを適当に切って入れ、牛肉を入れてほぐし、豆腐を入れて煮…

漢詩でララバイ

二十代の頃、ちょっと荒んだ生活をしていた時期がある。 といっても悪い事をしていたわけではなく、ほとんど無職でぶらぶらしていただけなのだが。 その頃の一日はだいたい午前10時とか11時ぐらいから始まる。とりあえず飯を食ったら、さて、今日は何をして…

ときどき何を書いていいかわからなくなる

……という状態になることがあって、実はいまがそうなのだ。 「スランプ」と言いたいところだが、スランプというのは調子がいい時があってのことなので、このブログには当てはまらないような気もする。 「何を書いていいかわからない」というのは、別の言い方…

「草とり」

ぼんやりラジオを聴いていると、徳冨蘆花の「草とり」という随筆の朗読があった。 気になって調べると、「青空文庫」に入っていたのであらためて読んでみる。(以下、引用は青空文庫版。ただし、仮名遣いや表記は適宜変更した) 六、七、八、九の月は、農家…

この本(本好きのための童謡)

本好きのための童謡です。 童謡「この道」(作詞・北原白秋、作曲・山田耕筰)のメロディにのせて読んでください。(「この道」がピンとこない人は、下の方に曲を引用しているので参照してください) では、どうぞ。 この本は いつか読む本 ああ そうだよ だ…

人まかせ

前回、ショーン・バイセル『ブックセラーズ・ダイアリー』という本について書いた。 著者はスコットランド最大の古書店「ザ・ブックショップ」の店主なのだが、その店でちょっとおもしろいサービスを行なっている。 それは「ランダム・ブッククラブ」という…

スコットランド古本屋日記

ショーン・バイセル『ブックセラーズ・ダイアリー スコットランド最大の古書店の一年』(矢倉尚子訳、白水社、2021)という本を読んでいる。 2001年のクリスマス。著者が帰省で実家があるウィグタウン(スコットランド南西部にある小さな街)に戻ったとき、…

いまそこにある危機

ついにというか、とうとうというか、私の職場でもコロナの感染者がでた。 昨日、久しぶりに隣の市の大型書店に行って至福の時間を過ごしていたら、ポケットの携帯が鳴った。会社からだった。 会社に限らず、日頃私に電話がかかってくることはめったになくて…

イワシの梅煮

休日。 午前中に銀行に行って、そのままスーパーで買い物。 最近すっかり夏バテなので、今日はとりあえず肉を食べようと思っていたのだが、鮮魚コーナーで小イワシが10尾98円で売っているのを見かけて立ち止まる。や、安い。 これを3食分とすると1食あたり約…

運まかせ

例によって例のごとくブックオフを徘徊していると、文庫棚の近くにこんなものが売られていた。 たしか「お楽しみセット」みたいな名前がつけられていたと思う。文庫本2冊で300円である。同様のものが20個ぐらい平積みしてあって、すでにいくつか売れているよ…

蓄財について

本多静六『私の財産告白』(実業之日本社文庫、2013 / 実業之日本社、1950)という本を読んでいる。 著書は林学(森林や林業に関する学問)の学者なのだが、その本業以上に投資家として、また蓄財術に関する本の著者として知られた人だ。 この本も、著者の…

味噌、白秋、台湾藻

スーパーで買い物をしているとき味噌が切れていたのを思い出して、いつも買っている味噌を手に取ったのだが、ふと思いなおしてそれを棚に戻した。 今日は普段買わない味噌を買ってみようと思ったのだ。 いままで使っていた味噌は大手メーカーのだし入り味噌…

絵葉書を読む(その8) もんぺ

『絵葉書を読む』第8回。今回の絵葉書はこちら。 『モンペ』(中原淳一) 「もんぺ」は、主に農山村の女性の仕事着として古くからあった袴状の着物である。(名称や細部の仕様は地域によって異なる) この「もんぺ」が広く全国的に知られるようになったのは…

お金の話

私の両親は、子どもの前でお金の話をしなかった。 いや、姉に対してはどうだか知らないが、少なくとも私の前ではしなかったし、するべきではないと思っていたようだ。 私は「末っ子の長男」として激甘に育てられたので、なにか欲しい物があると(高価な物で…

《日本の文学》第1巻『坪内逍遥・二葉亭四迷・幸田露伴』(その1)

以前予告していたように、中央公論社が昭和39年から45年にかけて刊行した日本文学全集《日本の文学》を読み始めた。 paperwalker.hatenablog.com 第1巻(第71回配本、昭和45年)には、坪内逍遥、二葉亭四迷、幸田露伴の3人の作品が収録されている。(ちなみ…

セルフ・レジ

とあるスーパーでレジに並んだところ、そこのレジがセミ・セルフ式(商品をレジに通すのは店員で、支払は客が機械で行うタイプ)に変わっているのに気づいた。 そのスーパーは毎日行くところではなく、10日か2週間に一度ぐらいの頻度で行っているのだが、前…

捕まりそうになったり、捕まったり

こんな夢を見た。 どこかの大きなお屋敷の一室に、お馴染みの「ルパン三世」一味が集まっている。どうやらこの屋敷にある「お宝」を狙っているようだ。 しかし私は彼らの仲間ではない。 私は、彼らと同じ「お宝」を狙う別の怪盗の仲間である。 白髪をきっち…

「いざ」というとき

昨年の春頃、ひょんなことから3万円分の「Amazonギフト券」というのをもらった。 まったくの「棚からぼた餅」で、降って湧いた「あぶく銭」というやつだ。 せっかくなので、普段はしないような使い方をして景気良くパーっと散財しようと思ったのだが、悲しい…

コショなひと

先日、購読している「日本の古本屋」のメールマガジン(無料)が配信されてきたので読んでいたら、こんな文章が目に入った。 「コショなひと」始めました なんだか冷やし中華みたいだが、それはともかく、「コショなひと」って何? 実は「コショなひと」とい…

姫女苑(ひめじょおん)

季節を代表する花というものがある。春なら桜、夏なら向日葵(ひまわり)みたいな。 いまの時期なら、多くの人が思いうかべるのは紫陽花(あじさい)だろうか。 私の場合、この時期の花といえば、なんといっても姫女苑(ひめじょおん)である……といっても、…

親になる人、ならぬ人

前回、雨隠ギド『甘々と稲妻』という漫画の話をした。 料理を通して父と娘の成長を描いた漫画で、あたたかい気持ちになれるいい漫画だと思う。 しかし、読んでいて少しだけ気持ちがざわざわした。 たとえばこんな場面。 「父親にしてくれてありがとう」 こう…

おいしい顔のためならば

アニメきっかけで読んだ漫画に雨隠ギド『甘々と稲妻』(講談社、全12巻、2013-19)という作品がある。 この前の休日に読み返したのだが、やっぱりいい漫画だった。 高校で数学を教えている犬塚公平は半年前に妻を亡くし、いまは5歳になる娘のつむぎと二人で…

ときには迷子のように

梅雨の中休みのような天気のいい休日、いつものようにブックオフに行った。 今回行った店舗は家から(バイクで)1時間半ぐらいのところなのだが、この日はちょっと都合があって、家を朝の7時に出なければならず、普通に行っても開店の10時よりぜんぜん早い時…

絵葉書を読む(その7) 関東大水害

『絵葉書を読む』第7回。今回の絵葉書はこちら。 『(明治四十三年八月東京大出水之実況)本所割下水附近』 明治43年8月中旬。 梅雨前線と2つの台風の影響により、関東地方は集中豪雨にみまわれた。 この豪雨によって、関東地方全体で死者769人、行方不明者…

本と善意

ヘレーン・ハンフ編著『チャリング・クロス街84番地 増補版』(江藤淳訳、中公文庫、2021)が出たので読んだ。 たしか四半世紀ぐらい前に旧版を読んでいるはずだが、細かいところは忘れていたので、新鮮な気持ちで読むことができた。 著者のヘレーン・ハンフ…

一人称

ブログを始めた時からずっと「私」という一人称を使っている。 とくに理由があったわけではなく、自然とそうなったのだが、ほかの人の文章を読んでいると、別の一人称の方がよかったのかなと思うことがある。 たとえば男性なら「僕」や「俺」というのがある…