何を読んでも何かを思いだす

人生の半分はフィクションでできている。

2019-01-01から1年間の記事一覧

タバコに関する雑感

先日、職場の食堂(休憩室)からタバコの自動販売機が撤去された。 いまのご時世から考えると「まだあったの?」という気もする。 私自身はタバコを吸わない。 というか、生まれてこのかた吸ったことがない。これは私の年代(今50歳)の男としてはけっこう珍…

クリスマスのジレンマ

クリスマスですか。 毎年この時期になると複雑な気持ちになる。 ひとつには、いい大人がなに馬鹿騒ぎしてんだよ、という気持ちがある。さすがにいまさら「キリスト教徒でもないのに……」とは言わないが、それにしても浮かれすぎだろ、いいかげん大人になれよ…

詩歌再入門

ときどき詩や短歌を引用しているぐらいだから、そういうものが好きではあるのだが、その一方で、少しばかり苦手意識も持っている。 いや、苦手というのは正確ではないな。なんというか、詩歌を前にすると少し緊張してしまい、小説やエッセイを読むときのよう…

小人閑居して不善をなす

忙しい……。 予想していたように12月に入って猛烈に忙しく、後半になってそれに輪をかけて忙しくなった。心身ともに疲弊して、青息吐息の毎日だ。 と言いながら、こうしてブログを書くぐらいの時間と気力はあるのだから、死ぬほど忙しいというわけではない。…

人間の《芯》

去年今年貫く棒の如きもの(高濱虚子) 私が学生のとき、文学の科目で半年ほど俳句についての講義があった。近現代の有名な俳人の句を数句ずつ取り上げて解説していくような授業だ。 当時の私は俳句というものにまったく興味がなくて、授業もただ単位を取る…

年齢のこと

フィンランドの新しい首相に34歳の女性が就任するらしい。 www3.nhk.or.jp 日本の政治家の中では比較的若く見える安倍さんでも65歳だから、親子ほど歳の差がある。日本ではちょっと想像もできないことだ。 何事も若ければいいというわけではなく、また若いか…

ツバキの花が咲きました

うちの荒れた庭にツバキの木があって、白と赤、二色の花を咲かせている。 こちらは白。 こちらは赤。 赤といっても真っ赤ではなく、ちょっとピンクっぽい赤だ。 偏見かもしれないが、こういうピンクっぽい赤は、日本人よりも中国人の方が好みそうな気がする…

それだけのこと

口癖というほどではないが、「それだけのこと」という言葉をわりとよく使う。 他人との会話で使うのではなく、独り言のように、自分の心の中でつぶやく感じだ。 この、ちょっと開き直ったような、少し投げやりな感じがする言葉には不思議な力がある。 私はけ…

頭痛のスタイル

昨日から本格的に風邪をひいている。 おまけに頭痛もひどい。 せっかくの連休で(仕事の都合でいつも土日が休みというわけではない)、あれもしなければ、これもやらないと、と考えていたのだが、すっかり駄目になってしまった。(もっとも、体調が良くても…

背負い背負われ

たはむれに母を背負ひて そのあまり軽きに泣きて 三歩あゆまず (石川啄木) 一度だけ自分の父親をおんぶしたことがある。 父は月に一度、町の診療所に薬をもらいに行っていた。以前は自分で車を運転して行ったのだが、免許を自主返納してからはタクシーを使…

ひっつき虫(草の名前・その3)

めずらしく庭で雑草を刈っていると、いつのまにか軍手がこんなことになっていた。 衣服はこういうのがくっつきにくい素材だったので良かったが、うっかりセーターでも着ていようものならえらいことになっていた。 この雑草のせいだ。 この雑草の名前はコセン…

大人になってできなくなったこと

大人になって虫に触れなくなった。 田舎生まれ、田舎育ちなので、子どもの頃は家の外で遊ぶことが多かった。 家庭用ゲーム機などもまだなかったので、友だちと野球(のマネごと)をしたり、鬼ごっこや隠れんぼをしたり、ちょっと遠くの雑貨屋で売っていた銀…

きのみきのまま

ネットで書評記事を見ていたとき、「おや?」と思った。 綿矢りさの長篇小説『生のみ生のままで』(きのみきのままで)という本が紹介されていたのだが、《きのみきのまま》ってこういう漢字だったっけ? と思ったのだ。 私が知っているのは「着のみ着のまま…

生活の条件

誰が言ったのかは忘れたが、「歳をとって田舎暮らしをしたいという人がいるけれど、年寄りこそ便利な都会に住むべきだ」という趣旨の発言を聞いたことがある。そのときは特に何も思わなかったけれど、いまは「なるほどその通りだ」と思う。 私はいま田舎に住…

ありふれた日常のかけがえのない時間

私は漫画も基本的には紙の本しか買わないが、無料の電子版はよく読む。 そういうのはたいてい最初の1巻か、3巻ぐらいまでが無料で、続きが読みたければ有料で、ということになっている。試供品というか、釣りでいえば「撒き餌」のようなものだ。 そのまま続…

「いい感じ」を探して

まえから読みたいと思っていた本が文庫になったので、買ってきて読んだ。 宮田珠己『いい感じの石ころを拾いに』(中公文庫、2019 / 河出書房新社、2014) 内容は、宮田さんが編集者などと一緒に海辺に石を拾いに行ったり、石の愛好家に話を聞きに行ったり…

古本まつり

先日、とある「古本まつり」に行ってきた。 私は人がたくさんいる場所が嫌いなので、祭りと名のつくものには近づかないことにしているのだが、「古本まつり」だけは別だ。 最近では古本を買うのもネットが中心で、古本屋にもあまり行かなくなってしまった。…

できれば使いたくなかった物

このあいだ会社で健康診断があった。 私はほかにこの手の検査を受けていないので、年に一度のこの健康診断がある意味楽しみだったりするのだが、今年はちょっと気が重くなってしまった。 血圧が高い。 以前から高めの数値ではあったのだが、ここ2、3年で右肩…

エマニュエル君

前回の記事で文通について書いた。 そのとき私は調子に乗って「文通とは……」みたいな知ったふうなことを書いてしまったのだが、実のところ、私は一度しか文通をしたことがない。(なのにエラソーなことを言ってしまった。なんかすいません) その一度という…

いまどきの文通

先日、コインランドリーで洗濯が終わるまでの時間潰しに女性誌を読んでいると、ちょっと変わった広告を見つけた。 「フミフレ」という、読売グループがやっている「文通サービス」だ。 その「文通サービス」というのがどういうものなのか気になったので、家…

的?

昨日、仕事の帰りにふらりと書店(市内に2軒ある新刊書店のひとつ)に立ち寄って新刊文庫のコーナーを見ると、変な本があった。 岩波文庫……的? なんだこれ? 2017年に岩波書店から刊行された佐藤正午の直木賞受賞作『月の満ち欠け』の文庫化。それはわかる…

星の光のように

先日、藤原定家によって筆写された『源氏物語』の一帖(若紫)の写本が新たに発見された、というニュースがあった。今から800年ほど前のものだという。 www.kyoto-np.co.jp 私は『源氏物語』に詳しいわけではないが、これがすごいことだというのはわかる。 …

貧乏舌

私はいわゆる「貧乏舌」なので、食べ物に対するこだわりがあまりない。 味覚が大雑把なので微妙で繊細な味の違いがよくわからない。高級なものを食べても、安いものを食べても、「どっちも(それなりに)おいしい」で終わってしまう。 別の言い方をすれば、…

稲刈りと感傷

私の家は農業をやっていたので、秋になれば稲刈りが家族総出の大仕事だった。 私の古い記憶(3~5歳頃?)では、庭で手動の脱穀機を使っていた覚えがある。たしか「唐箕(とうみ)」という穀物を選別する機械もあったように思う。 唐箕。ハンドルを回して風を…

著名人のたしなみ

前回読んだ鈴木魅『精神修養 道歌物語』の巻頭には、2人の著名人の「書」が掲載されている。 一人は新紙幣の顔として最近なにかと話題の渋沢栄一。 言葉は『論語』の中の一節で、いかにもという感じがする。 日付けとして「甲寅(きのえとら=大正3年)雨水…

精神のサプリ

ときどき無性に古くて安い本が買いたくなる。まあ、古本病の発作のようなものだ。 この場合の「古い」というのはだいたい戦前ぐらいで、「安い」というのはおおむね500円以下(できれば送料込みで)だ。そういう時はもっぱらヤフオクをを漁ることになるのだ…

開かない花(続・草の名前)

あいかわらず私の家の周りは雑草だらけだ。 このあいだ久しぶりに姉が家に来たのだが、そのことでこっぴどく怒られた。この歳になってあんなに人から怒られるとは……。(「どうせ冬になったら枯れるから」と言ったのがマズかったのだろうか) まあ、確かに一…

ゲームの規則

2、3日前、「はてな」からこんなメールが届いた。 そうか、ブログを始めてもう半年か。いや、気づいてはいたのだが、特にどうということもなくスルーしようと思っていた。しかしこういうメールをもらうと、やっぱり節目のような気がしてくる。 ほかのブログ…

気分はもう老後

若い頃から「仙人になりたい」などと言うくらいだから隠遁願望が強い。 今はやむを得ず黄塵にまみれているが、老後は(経済的事情が許せば)あまり人と交わらず、世の中と交わらず、静かにひっそりと生きたい。 老後のスタイルはそれでいいとして(本当に?…

虫のいろいろ

このまえカメムシのことを調べていて、おもしろそうな本を見つけた。 有吉立『きらいになれない害虫図鑑』(幻冬社、2018) 画像は図書館本 著者の有吉立(りつ)さんは兵庫県赤穂市にあるアース製薬の社員で、主に研究に使う害虫の飼育をしている。 そこで…