何を読んでも何かを思いだす

人生の半分はフィクションでできている。

角川文庫の横溝正史

前回の記事で書いていた通り、横溝正史の『八つ墓村』を読んでいる。 映像化作品(映画・ドラマ)との違いに気をつけながら読んでいるのだが、原作の方が登場人物が多く、人間関係も複雑だ。さすがに犯人は同じだが(ドラマは少し違う)、主人公と犯人の関係…

渥美清の金田一耕助

YouTubeに松竹映画のチャンネルがあって、月に一本昔の映画が無料公開(二週間の期間限定)されている。今月は横溝正史の『八つ墓』(1977年公開)だったのでさっそく視聴してみた。 なんといっても興味深いのは、金田一耕助を渥美清(敬称略、以下同じ)が…

ちょっとだけ遠くに行きたい

風邪がなかなか治らない。ここ10日ぐらい調子が悪い。 寝込むほど酷くはならないがスッキリ全快するわけでもなく、体がだるくてなんとなく頭が鈍くなっている感じがする。あと鼻水がひどい。 以前は薬を飲んで一晩寝ればたいてい治っていたのだが、どうも抵…

タイトル未定

前回、こんな記事を書いた。 paperwalker.hatenablog.com 内容を簡単に要約すると、 ・ブックオフのウルトラセールに行ったけど収獲はイマイチだったこと。 ・大石トロンボ『新古書ファイター真吾』という漫画を読んだこと。 ・本を探すのは楽しい。 ・でも…

心は孤独な(本の)狩人

今年もブックオフのウルトラセールに行ってきた。 半日かけて3軒の店舗をまわったものの、成果としてはいまひとつだった。前から狙っていた本は買えたけれどその他の収獲はパッとせず、少しばかり徒労感が残る結果になった。 もっともこの結果は店の品揃えの…

2023年のブ活をふりかえる

ようやく地獄の繁忙期が終わった。 地獄というよりも、社畜という名の「畜生道」だったような気もするが、とりあえずこれで一息つける。 いやー今年はキツかった。疲れ果てた。この期間だけで体重が2キロぐらい落ちてしまった。甘い物ばっかり飲み食いしてい…

絵葉書を読む(その14) 愛国婦人会

『絵葉書を読む』第14回。今回の絵葉書はこちら。 「愛国婦人会」が発行した絵葉書だ。 「愛国婦人会」は、佐賀県出身の社会活動家である奥村五百子が1901年(明治34年)に創立した団体である。 その主な活動目的は戦没将士の遺族や廃兵の救護・支援だったが…

冬のささやかな楽しみ

仕事が地獄である。 毎年この時期はそうなのだが、年々キツくなっているような気がする。仕事自体は変わらなくても、私の体が衰えてきているのだろう。 いまならはっきりと「死兆星」が見えそうな気がする。 そんないまの時期のささやかな楽しみは、仕事帰り…

スミッシングにご用心

先日、仕事が終わって帰る用意をしていたところ、携帯に1通のSMS(ショートメッセージ)が入っていることに気づいた。 確認すると、こんな文章が。 「お客様がいらっしゃらなかったため、本日の荷物は局に戻りました。」 そしてその後にどこかのURLが続いて…

そろそろ時代小説を読もうじゃないか

若い頃からできるだけいろんなジャンルの本を読もうと思ってきた。 実際、古典的な文学作品からよくわからない雑本まで、それなりに幅広く読んできたつもりでいる。つまりは乱読だ。 しかしその中で、なんとなく読まずにきたジャンルというのがあって、それ…

『鵼の碑』雑感

ようやく京極夏彦の『鵼の碑』(2023、講談社)を読み終えた。 なんだかんだで一ヶ月近く読んでいたような気がする。読んでる間にすっかり寒くなってしまった。 以下、簡単にメモ的感想を書いておく。(気をつけてはいるけれど、うっかりネタバレの可能性が…

納豆の食べ方

はてなブログの「みんなのお題」を見ていたら、「美味しい納豆ご飯の食べ方は?」というお題があったので、私の定番の食べ方を紹介したい。 それは「ごま納豆」である。(である、というほどたいそうなものではないが) 市販の納豆に刻んだネギを入れ、付い…

寝食忘れるべからず

ここ数日ずっと京極夏彦の『鵼の碑』(講談社、2023)を読んでいるのだが、まだやっと半分ぐらいで、ぜんぜん読み終わらない。 いつものように煉瓦みたいに分厚い本(二段組800頁余)だし、それでなくても私は超遅読なので、もどかしいような、でも嬉しいよ…

彼岸花幻想

いまの季節に田んぼ道をバイクで走っていると、道沿いに色鮮やかな彼岸花を見ることができる。 周りにある色が稲の黄や黄緑、雑草の緑ばかりだから、その花の赤い色がことさら目立つ。 色ばかりではなく、その姿形も独特だ。葉もつけずにすうっと伸びた細い…

ブログ、あるいは手造りの小屋

ブログを始めた理由はたぶん「憧れ」だったのだと思う。 好きな書き手の好きな文章があって、自分もそんな文章を書いてみたいという気持ちがあった。 別の言葉で言えば、それまでずっと「読む側」だったのが真似事でもいいから「書く側」に回ってみたいとい…

帰ってきた「あいうえお短歌」

いまから3年ほど前、このブログでこんなことをやっていた。 paperwalker.hatenablog.com 「あいうえお作詩」というのは一種の言葉遊びで、各行の頭の文字を五十音順にして詩を作っていくというものである。大喜利の「あいうえお作文」みたいなものだ。 私は…

只管打読

前回、京極夏彦の『鉄鼠の檻』を再読しているという話をした。(まだ読み終わってない) その際、事実確認のためにいろいろネットで調べていたら、「百鬼夜行シリーズ」(京極堂シリーズ)の最新長編『鵼の碑(ぬえのいしぶみ)』が来月刊行されるという情報…

再読のジレンマ

去年から気が向いたときにぽつりぽつりと京極夏彦の「百鬼夜行シリーズ」(京極堂シリーズ)を再読している。 いま読んでいるのは第4長編の『鉄鼠の檻』(講談社、1996)である。 順番通りに読んでいるわけではないので、この作品を読み終われば長編は残すと…

家を建てる

去年の夏にこんな記事を書いた。 paperwalker.hatenablog.com 私が住んでいる地区の古い家が解体されたという、ただそれだけの話である。 その家の跡地はしばらく放っておかれて雑草だらけになっていたのだが、今年に入ってからきれいに整地された。その際に…

ミニマリスト鴨長明

前回読んだ勢古浩爾『ただ生きる』という本の中で、鴨長明の『方丈記』について触れているところがあった。(正確には玄侑宗久『無常という力ーー「方丈記」に学ぶ心の在り方』という本についてだが) それでなんとなく『方丈記』を読んでみたくなった。 『…

ただ生きる

先日大型書店をうろうろしている時に、こんな本を見つけた。 勢古浩爾『ただ生きる』(夕日書房、2022) 著者の名前は知っていたが読んだことはなく、夕日書房という出版社も初めて聞く名前だったけれど、タイトルに惹かれて読んでみた。(ちなみに夕日書房…

読む読む詐欺

私はいま猛烈に反省している。 何の話かというと、この記事のことだ。 paperwalker.hatenablog.com 2年前のこの記事で、私は「日本文学全集読破計画」について書いた。 なんだか大仰なタイトルだが、これはとても単純なことで、昭和に刊行された日本文学全集…

塩加減

徳川家康の側室にお梶の方という女性がいる。 ある時、家康が家臣たちと話をしていて、唐突に、 「一番うまいと思う食べ物は何か?」 と尋ねた。すると家臣たちは口々に「あれがうまい」「いやいや、これが一番だ」と言い合った。他愛のない雑談である。 家…

鯉のぼり

5月の初め頃、地元の田舎道を原付で走っていると、道沿いに大きな鯉のぼりを揚げている家があった。型通りに4匹の立派な鯉のぼりだったが、残念ながらその日はまったく風がなく、空を泳ぐというよりは力無く吊られているといった感じだった。 この辺りの田舎…

絵葉書を読む(その13) 気の長い将棋

久しぶりの『絵葉書を読む』第13回。今回の絵葉書はこちら。 『京都鞍馬山 源義経背比石』 源義経(遮那王)は、幼少の頃、京の鞍馬寺に預けられていたのだが、やがて奥州藤原氏を頼って寺を出奔する。その時名残りを惜しんで自分の背を比べたという石が「背…

本を漁る

今年のゴールデンウィークは3日と4日が連休になっただけであとは仕事。なので3日に出かけてきた。行き先は、今日も今日とてブックオフである。 このブログを継続的に読んでくれている人は「またかよ。ほかに行くとこないんかい?」と思うかもしれないが、そ…

歌を忘れたカナリアは……

マズい。ブログが書けなくなってる。 時間がないわけではない。むしろ余裕がある。 いわゆる「ネタ」がないわけでもない。書きかけて放置している下書きがいくつもある。 それなのにいざ書こうとすると指が重くなる。思うように言葉が出てこなくなる。ブログ…

有料/無料

困ったことになった。 いつも利用していた無料動画配信サービスの「 GYAO 」が先月いっぱいでサービス終了になってしまったのである。 これから私はどうやってアニメを見ればいいのか。 代替案として「Abema」を使ってみたけれど、無料で見られるものは意外…

なんにもない

ある休日、朝飯を食っている時、ふいに、まったく唐突に昔見ていたアニメ『はじめ人間ギャートルズ』のエンディング曲が頭の中で流れ始めた。 『はじめ人間ギャートルズ』は原始時代の家族の日常を描いたギャグアニメで、原作は園山俊二の漫画。アニメ放送は…

小銭を数えながら

ある日、いつものように財布のレシートを整理しようとしたら、異様に財布が重いのに気づいた。いつのまにか硬貨を入れる部分がパンパンに膨らんでいる。 普段は買い物のレジなどでできるだけ小銭を減らすような払い方をしているのだが、めんどくさくてお札ば…