何を読んでも何かを思いだす

人生の半分はフィクションでできている。

虫のいろいろ

 

このまえカメムシのことを調べていて、おもしろそうな本を見つけた。

有吉立『きらいになれない害虫図鑑』幻冬社、2018)

 

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画像は図書館本

 

著者の有吉立(りつ)さんは兵庫県赤穂市にあるアース製薬の社員で、主に研究に使う害虫の飼育をしている。

そこでは、例えば、ゴキブリ23種100万匹以上、カメムシ5種3000匹、蚊5種5万匹、ダニ6種1億匹以上などが飼育されている。(こう文字で書いただけでも背中の方がぞわぞわしてくる)

そんな仕事をしている人なので、もともと理系の研究室にでもいた人なのかと思ったらぜんぜん違う。

有吉さんは東京の美術系の専門学校に進学したが、いろいろあって地元にUターン。そこでたまたま新聞に出ていたアース製薬の求人に応募したら採用された。

応募の理由は「地元の優良企業だから」というもの。その求人にはちゃんと仕事内容として「研究に使う虫の飼育」と書かれていたので、入社して突然その部署に配属された、というわけではない。

子どもの頃から虫が好きだったというわけでもなく、ゴキブリなどは普通に嫌いだったのだが、仕事内容についてはあまり深く考えなかったらしい。

入社して最初に担当したのがハエで……いや、具体的に書くのはやめておこう。(私もあまり書き写したくない)

しかしそれから20年以上勤務しているというからすごい。たとえ最初から覚悟して入社した人でも、無理な人は無理だ。私なら5分で辞表を出す。(というか、もともと応募しないけど)

 

この本にはいろいろな害虫のあまり知られていない生態が書かれていて(例えば、地球上で最も人間を死に至らしめている生物は蚊だったり、ムカデは目が退化しているので触覚に何かが触れると瞬時に噛みつく、など)それはそれで興味深いのだが、私はそれよりも、職員の人たちの奮闘ぶりがおもしろかった。

害虫も、放置していても勝手に増えていくようなのもいれば、飼育や繁殖に意外と手間がかかるようなのもいる。それぞれの害虫にあわせた方法があり、それはさまざまな試行錯誤から考え出されたものだ。

そうやって手間暇かけて育てていくことには、害虫もそうでない生き物も違いはないのかもしれない。

 

実は今も好きなわけではありません。

でも飼育するために、観察して生態を知るうちに恐怖心とか偏見はなくなりました。

 

 それが「害虫」かどうかは人間が決めたことであり、当の虫はただひたすらに生きているだけなのだ。

 しかし……人間にさまざまな害をなすこともまた事実である。仲良くするわけにはいかない。だから著者が言うように「正しく嫌う、正しく怖がる」必要がある。

 

さて、こうしていろいろと知識を得たのだから、私も今度台所でゴキブリを見たらじっくり観察を……いや、やっぱ無理ッス。