何を読んでも何かを思いだす

人生の半分はフィクションでできている。

ムカデはムカデ

 

寝ている時にムカデに頭を咬まれた。

 

夜中にふと目が覚めて妙な違和感があるなと思ったら、頭に鋭い痛みを感じて跳ね起きた。

灯りをつけて枕を見ると、ああ、やっぱり、12、3センチぐらいの黒々としたムカデが乗っかっている。

半ばパニック状態で台所に殺虫剤とハエ叩きを取りに行ったが、布団に戻るとムカデの姿は消えていた。さあたいへんだ。布団をひっくり返したり、物をあっちこっちに移動させたり、大捜索が始まった。これがゴキブリだったら「チッ」と舌打ちして終わりだが、ムカデは放置しておけない。安心して眠れない。

 

20分ほど探してようやく見つけ、まず殺虫剤を噴きかけた上で、ハエ叩きで打つべし! 打つべし! 打つべし! ムカデは生半可な打撃では死なない。

動かなくなったところで窓の外に捨て、風呂場に行って咬まれた所を水で洗い、虫刺されの薬を塗った。(薬を塗る前に毒を洗い流すのが大事)

痛みのせいでなかなか寝付けなかったが、朝起きた時にはいくらか違和感が残る程度になっていた。

まったく、今年はすでに三回ムカデに咬まれている。しかもそのうちの二回は頭である。坊主頭だから咬みやすいのだろうか。それとも美味そうに見えるのか。

 

(可愛く描いてもムカデはムカデ)

 

もっともムカデはほとんど目が見えないらしい。

ムカデの感覚器官でもっとも重要なのは触覚で、これで対象を認識している。そして動くものはとりあえず咬むのである。

「ナイフみたいにとがっ」た顎肢で「触るものみな傷つけ」るという、まるで「ギザギザハート」みたいな奴なのだ。(たしかに見た目はギザギザっぽい)

 

そんな厄介者・嫌われ者のムカデだが、人間の役に立っているところもある。ゴキブリなど、他の害虫を捕食してくれるのだ。

それはありがたいけれど、しかし人間を咬むことを考えると、やっぱり厄介者であることに変わりはない。

ではもし仮に、ムカデが絶対に人間を咬まない生き物だったら好感が持てるかというと、それもちょっと難しい。

こう言ってはナンだが、あの見た目ではなあ。どう見たって外見は悪役である。「人は見た目が9割」なんて本があったけど、虫も見た目が9割かもしれない。(あまり他人のことは言えないけれど)

 

ムカデはムカデ

蝶々や セミ

ましてやカブトには なれない

 

しかしそれでいいのだ。

人間に嫌われたって、ムカデはムカデとして、ムカデの生をまっとうすればそれでいいのである。

私の前に出てきたら殺すけどね。

 

(害虫といえば、この本がおもしろかった)

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