何を読んでも何かを思いだす

人生の半分はフィクションでできている。

2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

背負い背負われ

たはむれに母を背負ひて そのあまり軽きに泣きて 三歩あゆまず (石川啄木) 一度だけ自分の父親をおんぶしたことがある。 父は月に一度、町の診療所に薬をもらいに行っていた。以前は自分で車を運転して行ったのだが、免許を自主返納してからはタクシーを使…

ひっつき虫(草の名前・その3)

めずらしく庭で雑草を刈っていると、いつのまにか軍手がこんなことになっていた。 衣服はこういうのがくっつきにくい素材だったので良かったが、うっかりセーターでも着ていようものならえらいことになっていた。 この雑草のせいだ。 この雑草の名前はコセン…

大人になってできなくなったこと

大人になって虫に触れなくなった。 田舎生まれ、田舎育ちなので、子どもの頃は家の外で遊ぶことが多かった。 家庭用ゲーム機などもまだなかったので、友だちと野球(のマネごと)をしたり、鬼ごっこや隠れんぼをしたり、ちょっと遠くの雑貨屋で売っていた銀…

きのみきのまま

ネットで書評記事を見ていたとき、「おや?」と思った。 綿矢りさの長篇小説『生のみ生のままで』(きのみきのままで)という本が紹介されていたのだが、《きのみきのまま》ってこういう漢字だったっけ? と思ったのだ。 私が知っているのは「着のみ着のまま…

生活の条件

誰が言ったのかは忘れたが、「歳をとって田舎暮らしをしたいという人がいるけれど、年寄りこそ便利な都会に住むべきだ」という趣旨の発言を聞いたことがある。そのときは特に何も思わなかったけれど、いまは「なるほどその通りだ」と思う。 私はいま田舎に住…

ありふれた日常のかけがえのない時間

私は漫画も基本的には紙の本しか買わないが、無料の電子版はよく読む。 そういうのはたいてい最初の1巻か、3巻ぐらいまでが無料で、続きが読みたければ有料で、ということになっている。試供品というか、釣りでいえば「撒き餌」のようなものだ。 そのまま続…

「いい感じ」を探して

まえから読みたいと思っていた本が文庫になったので、買ってきて読んだ。 宮田珠己『いい感じの石ころを拾いに』(中公文庫、2019 / 河出書房新社、2014) 内容は、宮田さんが編集者などと一緒に海辺に石を拾いに行ったり、石の愛好家に話を聞きに行ったり…