めずらしく庭で雑草を刈っていると、いつのまにか軍手がこんなことになっていた。
衣服はこういうのがくっつきにくい素材だったので良かったが、うっかりセーターでも着ていようものならえらいことになっていた。
この雑草のせいだ。
この雑草の名前はコセンダングサ(小栴檀草)、だと思う。(センダングサ属には近縁種や変種が多いらしいので、間違っていたらゴメンナサイ。というか、このブログの記事にあまり正確さを求めてはいけない)
ところどころに見える小さくて黄色いのが花で、手前の黒いトゲトゲが「種」である。もっとも、厳密に言えばこれは「実(痩果)」であって、この中に「種」が入っているのだが、ここはわかりやすく「種」としておく。(ヒマワリの「種」と同じことだ)
この種の先端のトゲが衣服の繊維の間に入って引っかかるのだが、実はこのトゲには逆向きの細かいトゲがついていて、一度繊維の間に入るとなかなか抜けないようになっている。こんな小さい種に、さらに細かい工夫があるのだ。
こんなふうにくっつくタイプの種をつくる植物はほかにもあって、そういう種をまとめて「ひっつき虫」とか「くっつき虫」とかいうそうだ。たしかに虫っぽい。代表的なのはオナモミの仲間だろうか。
私が子どもの頃は、こういうのをお互いに投げあったり(当たるとけっこう痛い)、こっそり他人の服にくっつけていたずらしていたものだが、いまの子たちもそんなことするだろうか。
種がくっつくのはもちろん人や動物に遠くまで運んでもらうためだ。
植物は個体が自分で移動することはできない。だから種という形で動物に運んでもらう。
一つの種が運ばれて、その場所に根を張って、また次の種をつくる。その種はまた少し遠くに運ばれて、次の種をつくる。また少し遠くへ。もっと遠くへ。もっともっと遠くへ……。
そうやって何世代もの長い時間をかけて自分たちが棲息する範囲を広げていく。
こんなふうに書くとなにかロマンチックな感じがしなくもないが、もともとその場所に棲息していた在来種にとってみればいい迷惑である。
もっとも、人間の歴史だってたいてい土地の奪い合いだから、偉そうなことは言えないのだが。