何を読んでも何かを思いだす

人生の半分はフィクションでできている。

生活の条件

 

誰が言ったのかは忘れたが、「歳をとって田舎暮らしをしたいという人がいるけれど、年寄りこそ便利な都会に住むべきだ」という趣旨の発言を聞いたことがある。そのときは特に何も思わなかったけれど、いまは「なるほどその通りだ」と思う。

 

私はいま田舎に住んでいる。

交通手段は原付バイクで、これのおかげでたいした不便もなく生活できている。いや、そりゃまあ、不満や不便を言い出せばキリがないけれど、とにかく生活は成り立っている。しかし、もっと歳をとったらどうなるだろう?

私はいま50歳だ。

いつまで生きるのか、それはもちろんわからないが、いつまでも原付を乗り回せるとは思えない。「足」がなくなったら、田舎で生きていくことはまずできない。幹線道路を走っているバスは年々運行本数を減らしている。そもそも一番近いバス停まで歩いて15分はかかる(いまの脚力で)。地域を回ってくれるコミュニティバスもあるけれど、本数は少なく、いつまで存続できるのかわからない。

私はいま独り暮らしだ。

これが将来2人になったり3人になったりする予定はない。そこはほっといてくれ。要するに、自分のかわりに日々の買い物などをしてくれる人はいない。手押し車を押してスーパーに買い物に来ている老人をよく見かける。車に乗せてきてもらったのならいいが、とぼとぼと歩いて帰っている人もいる。この人はいったいどのくらい歩いてきたのだろう、近所の人ならいいが、誰かほかに買い物に行ってくれる人はいなかったのだろうか? そう思うとなんだか切なくなる。老人にとってはちょっとした買い物も半日がかり、ひょっとしたら一日仕事かもしれない。

私は人付き合いが悪い。

高齢化社会は地域で支えあって、とか、人との絆を大切に、といった文脈からはこぼれ落ちそうな気がする。というか、すでにこぼれ落ちているかもしれない。

 

f:id:paperwalker:20191110101149j:plain

 

さて、こういったことをつらつら考えると、このままこの田舎にいてはいけないのではないか、どこかもう少し暮らしやすい街に移ったほうがいいのではないか、と思えてくる。

では私にとって暮らしやすい街とはどんな街だろう。生活の条件を整理してみよう。

全体としては田舎ではなく、かといって都会過ぎず、ほどほどの地方都市がいい。

食糧の確保は重要なので、歩いて行ける距離にスーパーマーケットが2、3軒ぐらいあるとありがたい。(そのうちの一軒は、衣料品やちょっとした家電なんかも扱っていてほしい)

それほど大きくはないが地元に根付いた本屋、古本屋、図書館。(ただしバスか電車で大型書店にも行ける)

それから……えっと……あれ? 

なにかほかにも大切なことがあるような気がするが、それぐらいしか思いつかない。

どうも私にとって生活というのは、結局のところ、食べることと読むことしかないようだ。ほかのことにはたいして興味がない。

だったらどこに住んでも大差ないような気も……。 

 

 

今週のお題「住みたい街、住みたかった街」

書籍化記念! SUUMOタウン特別お題キャンペーン #住みたい街、住みたかった街

書籍化記念! SUUMOタウン特別お題キャンペーン #住みたい街、住みたかった街
by リクルート住まいカンパニー