何を読んでも何かを思いだす

人生の半分はフィクションでできている。

日傘少女

 

去年の夏のこと。

日差しの強い午後、とある住宅街をバイクで走っていると、下校中の小学生に出会った。高学年らしい女の子の3人組で、仲良くおしゃべりしながら歩いていたのだが、私は思わず二度見してしまった。

女の子の1人が日傘をさしていたからだ。

 

(小学生が日傘?)

ランドセルと日傘の組み合わせがとても不思議だった。

私の感覚ではちょっと考えられないが、ひょっとしたら最近では珍しくないのか? 気になったので、家に帰ってさっそく「日傘 小学生」で検索してみた。

すると、日傘をさす小学生の目撃例(?)がいくつかあったが、それはやはり珍しい存在のようだった。

自分の子どもに日傘を持たせたいけど……というお母さんの相談もあったが、あまり肯定的な回答は得られていなかった。目立つのでいじめの対象になりやすいのでは、と危惧する意見もあった。

現状では日傘をさす小学生というのは、周囲からちょっと浮いた存在になってしまうのではないかと思う。もちろん、とくに肌が弱かったり、病気を抱えていたりすれば話は別だ。私が見た日傘少女にも、何か事情があったのかもしれない。 

 

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私が小学生の頃、つまり「40年以上前の田舎の話」ということだが、夏に子どもが真っ黒に日焼けするのは当たり前のことだった。男の子はもちろん、女の子もそうだ。

私はその頃からインドアなほうだったので、普段は生っ白(ちろ)い肌をしていたが、夏になればそれなりに黒くなった。

当時の子どもたちにとって、こんがり焼けた肌は(おおげさに言えば)夏の勲章みたいなものだったのではないかと思う。

周囲の大人も、子どもが真っ黒に日焼けするのを喜ばしく思っていたような気がする。

 

そんなノスタルジックな気分に浸っていたところ、こんなニュースを見つけた。

 

mainichi.jp

 

気温が高くなると、マスクをしていることで熱中症のリスクが高くなる。その対策の一つとして、登下校時に日傘を利用することを提案している。 すでに実践している小学校もあるらしい。

もしこの活動が全国的なものになったら、このことがきっかけになって、コロナ禍が去った後でも小学生の日傘が新しい常識として定着するかもしれない。

しかし、私のように子どもの日焼けは夏の勲章だと思っていた世代は、その「常識」を容易には受け入れられないかもしれないと思う。

 

常識もまた変化する。

時間をかけてゆっくり変化することもあれば、何かをきっかけに急激に変化することもある。

そうなった時、自分の記憶や経験に固執して、新しい常識を頭から否定するようなオッさん(もしくはジイさん)にはなりたくないな……と、自戒をこめて。