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何を読んでも何かを思いだす

あてのない読書、あてにならない感想、その他。

スコットランド古本屋日記

 

ショーン・バイセル『ブックセラーズ・ダイアリー スコットランド最大の古書店の一年(矢倉尚子訳、白水社、2021)という本を読んでいる。

 

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2001年のクリスマス。著者が帰省で実家があるウィグタウンスコットランド南西部にある小さな街)に戻ったとき、地元の古書店「ザ・ブックショップ」の店主から「店を買わないか?」と持ちかけられ、ほとんど衝動的に(銀行ローンを組んで)店を買ってしまう。著者が30歳のときだ。

ちなみにウィグタウンはスコットランド政府が募集した「ブックタウン構想」(本と書店による「町おこし」のようなもの)に立候補し、1999年に「ナショナル・ブックタウン」に認定されたところである。

それから十数年、「ザ・ブックショップ」は在庫10万冊を擁するスコットランド最大の古書店になった。

この本は、その「ザ・ブックショップ」の一年(2014年)を綴った日記なのだ。

 

とはいえ、古書店の日常はそんなに変化に富んだものではない。

大きなイベントとしては秋の「ブックフェスティバル」があるくらいで、あとは近隣の街に本の買い取りに行ったり、店で常連客や観光客の相手をしたり、ネット注文の対応をしたりと、いたって地味な毎日だと言っていいだろう。

しかしそんな毎日に彩り(?)を添えるのが、店を訪れる変わった(というか、困った)客たちだ。著者はそんな客たちを皮肉なユーモアをもって描いていて、それがこの日記の基調になっている。

 

この本の中で私がとくに興味深く読んだのは「アマゾソ」との関係について書かれている部分だ。著者の店もアマゾソに出品しているが、内心は複雑である。

 

アマゾソについて好意的なことを言う本屋はまずいないと思うが、悲しいかな、この町でネット販売をしようと思えばアマゾソ以外に店はないのだ。(p.22)

自営業の最大の喜びは、上司の命令に従わなくてすむことだ。ところがアマゾソは「エブリシング・ショップ」運動で快進撃を続けるうちに、ゆっくりと着実に、自営の小売店主にとっての上司になり代わりつつある。(p.29-30)

 

アマゾソはさまざまな基準で出品者(古書店)を評価し、評価が下がれば警告を発して改善を求め、改善されなければアカウントを停止する。だから古書店に強い影響力を持つ。

古書店の方も次第にアマゾソの顔色をうかがわなければならなくなる。それが気に食わなくても、ネット販売をする上でアマゾソは無視できないので従わざるを得ない。背に腹はかえられぬというわけだ。

(もっとも「訳者あとがき」によると、著者は現在ではアマゾソを介した古書の販売をやめ、自前のオンラインショップを立ち上げたという)

ついでに言えば著者は「キンドル」も大嫌いで、中古のキンドルをショットガンで破壊するという過激な動画をSNSにアップしたことがある。

(しかしこの本を含む自分の著作にはキンドル版もあるらしい。背に腹は……)

 

素人の私が言うのもおこがましいが、古書店の未来というのは決して楽観できるものではないだろう。それは決してアマゾソやキンドルのせいばかりではない。

しかし、それでも著者は(紙の)本と、本を読む人を信じているように思う。

 

本日最後のお客--SF小説を何冊か買った若いカップル--は、休みのたびに英国中の古本屋を巡り歩いているのだそうだ。こんな話を聞くと、かすかな希望の光が射した気がする。(p.275-276)

 

輝く未来というわけにはいかないが、まだお先真っ暗ということでもなさそうだ。