ある日、仕事の帰りに本屋に寄ったときのこと。
本を物色して、単行本、文庫本、漫画本をそれぞれ一冊ずつ持ってレジへ。レジには60代ぐらいの男性がいて対応してくれたのだが、そのとき、
「文庫にカバーをかけますか?」
と訊かれて(ん?)と思った。
もう一度言うが、私は単行本、文庫本、漫画本を一冊ずつ買ったのだ。漫画本はいいとして、普通なら「単行本と文庫にカバーをかけますか?」と訊くはずだ。なのになぜ文庫だけ?
単行本にもお願いします、と言おうかとも思ったが、自分から言うのもなんだし、疲れていてめんどくさかったのもあり、そのまま文庫本にだけカバーをかけてもらって店を出た。
それからしばらくして、私は突然、さっきのレジでのやり取りの意味を理解した。
どうやら誤解が生じていたらしい。
そのとき私が買った文庫本がコレ。伏見つかさ『エロマンガ先生』(電撃文庫)の第11巻だ。
おそらくさっきのレジの男性は、この小説をいわゆるエロ小説・官能小説の類だと思って、私に気を使ったのではないか? と思い至ったわけだ。
断っておくが『エロマンガ先生』はエロ小説ではない。ちょっと……いや、多少……いや、まあ、けっこうエッチなところもあるけれど、健全なラノベ(ライトノベル)だ、たぶん。
私は普段ラノベは読まないけれど、これはアニメきっかけで興味を持って読み始めた。
ちなみに「エロマンガ先生」というのは、ヒロインの女の子(カバーの真ん中の銀髪の子)がイラストレーターとして使っている筆名である。(筆名の由来には、深い意味があるような、ないような……)
そういうわけで(もし私が考えた通りであれば)それは完全に誤解なのだ。
しかし、まあ、それも無理ないかと思わなくもない。オッサンがこんなかわいいカバーの本を買ってる時点でちょっと引くし、なんといっても『エロマンガ先生』だしなあ。おまけにこの11巻のサブタイトルが「妹たちのパジャマパーティー」ときたもんだ。そりゃ誤解もされるか。
しかも私はこの本のほかに2冊別の本も買っている。まるで「エロ小説だけ買うのは恥ずかしいから、カモフラージュで普通の本も買いました」みたいに見えるではないか。
どんだけナイーブなオッサンだよ⁉︎ 昭和の高校生か⁉︎ などと、心の中で突っ込まれていたかもしれない。
……まあ、いいんだけどさ。