何を読んでも何かを思いだす

人生の半分はフィクションでできている。

納豆の話

 

新型コロナウィルスに関する流言飛語(デマ)の中に、納豆に関するものがあった。

「納豆菌がコロナウィルスに効く」というものだ。

なんでも、コロナが流行し始めた頃、茨城県で感染者が出ていなかったので、誰かがそんな冗談を言ったのが拡散されたとか。(もっとも、この噂の起源自体も怪しいものだが)

それで需要が集中し、スーパーで一時的に納豆が品切れになった。

実際、私がいつも行っているスーパーでも、ある日突然納豆が棚から消えたことがあった。「何事か?」と思ったのだが、後で前述の話を知って呆れながらも納得した。そのスーパーでも2、3日後には普通の状態に戻ったので、その噂も長くは続かなかったのだろう。それとも、場所によってはまだ品薄状態が続いているのだろうか?

まあ、実際に過剰購入した人でも、本当に「納豆がコロナに効く」と思ったわけではないだろう。ただ漠然と「体にいい」とか「免疫力が高くなる」といったイメージで買ったのかもしれない。もっとも、普段食べない人が何日か食べたからといって、どうなるものでもないだろうけど。

 

毎日ではないけれど、二日に一回ぐらいは納豆を食べている。 

子どもの頃の食卓に納豆が出てきたことはほとんどない。食べるようになったのは大学に入って一人暮らしをするようになってからだ。

貧乏学生の食事でもっとも大事なことは、とにかくご飯が進むこと。これに尽きる。だからいわゆる「ご飯のお供」は欠かせない。

納豆があれば、あとは即席のみそ汁と漬物(あるいは佃煮)にちょっとした惣菜で充分だ。

しかも納豆は安い。そのうえ健康にいいとなれば、これはもう食べない手はない。

それ以来、学校は卒業したが貧乏は卒業できなかったので、ずっと納豆を食べている。

 

納豆好きにおすすめなのがこの本。

発酵・醸造学の専門家で、「発酵仮面」(!)の異名を持つ小泉武夫さんの『納豆の快楽』講談社文庫、2006 / 講談社、2000)だ。

 

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小泉さんはしょっちゅう海外に行くけれど、そのときは必ず納豆のパックを持っていくらしい。

海外に行ったとき、食べ物や水が合わずにお腹をこわす人も多い。特に小泉さんは調査のために、あまり一般の旅行者が行かないようなところに行って、一般の旅行者が食べないようなものを食べたりする。しかし納豆のおかげで一度もお腹をこわしたことがないという。

ラオスに行ってうっかり生焼けのウナギを食べたときも、ベトナムでうっかり「表面には薄い膜のようなものが浮いていて、明らかに枯草菌か何かに汚染されていたスープ」を飲んでしまったときも、ヤバいと思ってすぐに納豆を食べたらなんともなかったそうだ。(というか、うっかりしすぎでしょ)

とにかく食中毒の予防には効果抜群らしい。

この本は、前半では納豆の栄養や健康効果、歴史や文化について多角的に書かれていて、後半ではいろいろな食べ方が紹介されている。

読んでるうちに無性に納豆が食べたくなる。

 

ちなみに、私がいま一番好んでいる食べ方は、納豆に刻んだネギとタレを入れ、そこに多めの「すりごま」を加えるというもの。ごまの芳ばしい香りがいい。

納豆とごまの組み合わせは、健康効果としては「鬼に金棒」みたいなものではないか。(ごまは大豆と一緒に食べるといいと、ごまのパッケージに書いてあるし)

なんだかんだ言って、やっぱり健康が気になる歳なので。