一昨日、早朝の仕事の後でかかりつけの病院に行った。いつもの血圧の薬を出してもらうためだ。
予約の時間よりだいぶ早かったけど、うまくいけば時間を繰り上げて診察してもらえる。今回は血液検査もなく診察だけなのですぐに終わるはずだった。
病院の入り口ではいつものように事務員さんが待っていて、非接触型の体温計で入ってくる人の体温を測り、簡単に体調を聞いている。もうおなじみの風景である。
私も手を消毒したあと体温を測り、さわやかな笑顔の事務員さんから「ここ1週間で熱が出たことはありますか? 風邪をひいてませんか?」という型通りの質問を受けた。
私がなんの気無しにへらへらした顔で「ああ、ちょっと風邪気味で……」と答えたその瞬間! 事務員さんの表情が一変した。漫画だったら「くわっ」という書き文字が入る感じだ。
しかし事務員さんはすばやくさわやかな笑顔に戻り(多少こわばっていたが)「どういう症状ですか?」と聞いてきた。
私は(あれ? なんかまずいこと言っちゃった?)と思いつつ、
「熱とか頭痛はないし、喉が痛いとかもないんですが、なんというか、少し倦怠感が……」
「倦怠感!」事務員さんはそう繰り返すと、どこかに電話をかけて「はい」とか「ええ」とか言いながら何かの指示を受けているようだった。
待つことしばし。
結局私は病院の中には入れてもらえず、事務員さんに案内されて病院に外付けするように作られた「臨時診察室」というところに連れて行かれた。まずそこでコロナの簡易検査(抗原検査)を受けなければならなくなったのだ。
「すいませんねえ。一応、念のためですから。あとで看護師が検査キットを持ってきますから。すいませんねえ……」と事務員さんは言って、私を残してそそくさと帰っていった。
「臨時診察室」はやや縦長の8畳ぐらいの広さで、簡易ベッドと椅子が2脚、小さなテーブルがあるだけの殺風景な部屋だった。私は椅子に座って、なんだかめんどくさいことになったなあと思った。正直に風邪気味なんて言わなきゃよかった。(というわけにはいかないか、やっぱり)
20分ほどして看護師さんがやってきて検査(鼻につっこむタイプ)をし、「2、30分で結果が出ますから」と言い残して出ていった。
それからさらに30分ぐらいたって、ようやく病院の中に入れてもらった。結果はもちろん「陰性」である。
私は不機嫌だった。
一時的に隔離されたことに不満があるわけではない。当然の処置だと思う。
1時間近く待たされたことも仕方がないと思っている。問題はそこではない。
問題だったのはその「臨時診察室」があまりにも寒かったことだ。もちろん暖房は入っていたけれど、あまり効果的ではないようだった。途中から設定温度を30℃まで上げたのだがやっぱり寒い。
換気のせいというよりも壁の薄さが原因ではないかと思う。そこは病院の外側にとって付けたような簡易的な建物で、急ごしらえの安普請という印象はまぬがれない。2月の朝の空気の冷たさが薄い壁を通して伝わってくるのだと思う。
体を動かせばいくらかマシになったかもしれないが、仕事の後なので疲れていた。
途中、寒さに耐えかねて毛布をもらいに行こうかとも思ったが、仮にも隔離されている身でうろうろするのもはばかられたので、ただひたすらに我慢していた。
おかげでその部屋を出る時には頭がぼーっとして鼻がぐずぐずいい始めていた。「風邪気味」だったものが見事に「風邪」に昇格したわけだ。
病院に行って風邪をひくって、なんだかなあ。