何を読んでも何かを思いだす

人生の半分はフィクションでできている。

会いたいけれど、会いたくない

 

はてな今週のお題が「会いたい人」ということだったので、自分にいま会いたい人なんているだろうか、と考えてみた。

……いないこともない。けれど、それは同時に、あまり会いたくない人でもある。

というのも、私の場合、会いたい人というのはたいてい「会ったら謝らなければならない人」だからだ。

 

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何度か書いているけれど、私は大学に進学するにあたって実家を出て、某地方都市で一人暮らしを始めた。そして卒業後もそこに20年ほど住み続け、10年ぐらい前に実家に戻ってきた。

実家に戻るにあたってはさまざまな葛藤があった。好きで戻ったわけではなく、戻らざるを得ない状況になったのだ。その葛藤の中で、だいぶ精神的に追い詰められていたように思う。

それで、いよいよ帰らなければならなくなったとき、私は友人や知人に何も言わずにその土地を去ったのだ。

私は社交性というものが限りなくゼロに近い人間だけど、それでもわずかながら知人といえる人たちがいたし、2、3人は友人と呼ぶにやぶさかではない人もいた(向こうがそう思っているかどうかは別にして)。いろいろと良くしてもらったり、世話になった人たちだ。

そういう人たちに、私は別れの挨拶さえせずにアパートを引き払った。自分の気持ちを整理するだけでいっぱいいっぱいで、友人のことを考える余裕がなかったのだ。その結果、随分な「不義理」をしてしまった。友人には後で事情を説明した手紙を書いたのだが、どう思っただろうな。友だち甲斐のない奴だと思ったに違いない。当然だ。

そしてそれ以来連絡をとっていない。

 

いまごろどうしているだろう、とたまに思うことがある。会ってみたいような気もする。しかし、会ったらあの時の不義理を謝らなければならない。素直に謝ることは、いくつになっても難しい。

いや、正直に言えば、どんな顔をして会えばいいのかわからないのだ。合わせる顔がないというか。

会ったとしても気まずいだろうな。その気まずさが一時的なもので、しばらくしたらまた昔のように気の置けない間柄になれればいいけど、それはどうだろう?

それならもう、お互い「過去の人」ってことでいいじゃないか、とも思う。 

 

会いたいような、会いたくないような……。

  

今週のお題「会いたい人」