いつも利用している動画配信サービスで、アニメ『スーパーカブ』の再配信があったので全話視聴した。
2回目なのでいろいろとツッコミたくなるところもあったけれど、やっぱりいいアニメだと思った。丁寧な描写と、落ち着いた静けさが好きだ。
ところで、物語の本筋とはぜんぜん関係ないところで、ちょっと引っかかる言葉があった。
主人公の友だちが夏休みに富士山で物資の搬送のアルバイトをするのだが、そこで作業に入る時に、
「ご安全に」
という耳慣れない言葉を使うのである。これが気になった。
実は以前、別のアニメの中でこの言葉を聞いたことがあったのだ。
『宇宙(そら)よりも遠い場所』という私設の南極観測隊に参加する女子高生たちの物語で、これもとてもいいアニメだったのだが、その中で観測隊の人たちが作業に入る時にやはり
「ご安全に」
と言っていたのである。
そのアニメを見た時には「おや? 変な言葉だな」と思っただけで、それ以上気にもならずにスルーしていたのだが、今回もう一度聞いてにわかに興味を覚えたというわけだ。
ネットで調べてみると、「ご安全に」は製造業や建設業などの危険を伴う現場で使われている挨拶らしい。一種の業界用語である。
言葉の来歴ははっきりしている。戦後、ドイツを訪れた住友金属工業(現・日本製鉄)の社員が、現地の炭鉱夫が使っていた「Gluckauf (ご無事で)」という言葉を聞き、それを「ご安全に」という言葉にして昭和28年から自社で使ったのが始まりという。
そこから金属関係だけでなくいろいろな分野で広く使われるようになっていったのだそうだ。
朝礼やミーティングの終わりに「それでは今日も一日ご安全に!」といった感じで使ったり、作業員同士がお互いに言ったりするのである。
日本語としてなんとなく違和感があるような気もするが、それは単に耳慣れないせいなのか、それとも語法的におかしなところがあるのか、私には説明できない。
ネットを見ると、現場で使っていても違和感を覚えるという人もいたので、まあ、独特な言葉には違いない。
しかし違和感はあっても嫌な言葉ではない。
機会があったら私も一度使ってみたいけれど、そんな機会はないだろうなあ。