何を読んでも何かを思いだす

人生の半分はフィクションでできている。

君はどこにでも行ける

 

いま、毎週楽しみにしているアニメがある。

 

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スーパーカブ

この春に始まった作品なのだが、このアニメ、はっきり言ってとても地味なのだ。

 

物語の舞台は山梨県北杜市。父親はすでに亡く、母親に失踪された小熊(こぐま)は、アパートで一人暮らしをしながら奨学金で高校に通っている。

両親はいない、お金もない、友だちもいない、趣味もないーーそんな何もない日常を淡々と生きていた。

ある時、小熊は一台の中古のスーパーカブを格安で買う。ただ通学を楽にしたいという理由だけで買ったのだが、そのカブが彼女の日常を少しずつ変えていく。

一人の女の子の変わっていく日常を、広がっていく世界を、丁寧に描いたアニメだ。

そういう作品なのでとても地味な印象なのだが、その静かで落ち着いた感じがいい。 

 

私がこの作品に惹かれるのは、もちろん自分が原付に乗っているからでもある。(カブじゃないけど)

このアニメを見ていると、自分が初めて原付を買ったときのことを思い出す。

18歳の夏だったけれど、たしかに世界が広くなったような気がした。まあ、「世界」はちょっとおおげさか。しかしそういう開放感があった。その気になれば、どこにでも、どこまでも行けるような。

もっとも、私の場合は彼女(たち)と違ってバイクに愛着を感じるというほどではなく、メンテナンスなんかもほとんどしないので、それでバイクを駄目にしたこともある。アニメを見ながらちょっと反省する。

 

原作の小説(角川スニーカー文庫、現在7巻まで)は未読だが、そこでは小熊たちはもう高校を卒業しているらしい。ちょっと読んでみたい気がする。

コミカライズ版もあって現在5巻まで。こっちはすでに読んだ。

 

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[原作]トネ・コーケン[漫画]蟹丹[キャラクター原案]博(角川コミックス・エース)

 

読んでいると、筋金入りの出不精の私でさえ少し遠くに行きたくなる。

風薫る5月。

バイクにはいい季節だ。