何を読んでも何かを思いだす

人生の半分はフィクションでできている。

なんにもない

 

ある休日、朝飯を食っている時、ふいに、まったく唐突に昔見ていたアニメはじめ人間ギャートルズのエンディング曲が頭の中で流れ始めた。

 

はじめ人間ギャートルズ』は原始時代の家族の日常を描いたギャグアニメで、原作は園山俊二の漫画。アニメ放送は1974年から76年にかけて、ということは、私が5歳から7歳の時ということになる。

話の内容はほとんど覚えていないが、みんなでマンモスを狩ってそのデカい輪切りの肉や骨付き肉を食べている場面なんかはぼんやり覚えている。

 

 

そのエンディング曲は『やつらの足音のバラード』という歌で、今回この記事を書くにあたって初めてタイトルを知ったのだが、これがなんとも言えない不思議な感じの歌なのである。(作詞は原作者の園山俊二、作曲はかまやつひろし、歌はちのはじめ)

 

 なんにもない なんにもない まったく なんにもない

 生まれた 生まれた なにが生まれた

 星がひとつ 暗い宇宙に 生まれた

 星には夜があり そして朝が訪れた

 なんにもない 大地に ただ風が吹いてた

 

やがてその星にはアンモナイトが生まれ、恐竜たちが栄え、マンモスが現れ、そして「やつら」がやってきた。「やつら」とはもちろん人類のことである。

つまりこの歌は地球の誕生から人類の登場までを描いた壮大なスケールの歌なのである。それがのんびりとした、しかしどこかもの悲しいような曲に乗って歌われる。いま改めて聴いても不思議な感じがする。

 


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子どもの頃の私がこの歌を聴いてなんと思ったか、もちろん覚えてはいない。ただ「変な歌だな」とか「暗い歌だな」ぐらいのことだったと思うけれど、40年以上経っても(一部を)覚えているくらいだから、子どもなりに印象深かったのだろう。

しかしこの歌はたぶん大人になって聴くほうが心にしみる。

この歌を聴いていると、日々の生活の細々とした悩み事なんか馬鹿馬鹿しくなってくる(ような気がする)し、世の中の煩わしいあれこれがどうでもよくなってくる(ような気がする)。まあ、地球の歴史に比べたらね……。

何か嫌なことがあって気持ちがくさくさしている時には、ひとつ深呼吸をして、この歌を口ずさんでみようか。

 

なんにもない

なんにもない

まったくなんにもない……