何を読んでも何かを思いだす

人生の半分はフィクションでできている。

『うる星やつら』の昭和感

 

今期のアニメで楽しみにしていたものの一つにうる星やつらがある。

小学館創業100周年記念という鳴り物入りでの再アニメ化である。

 

 

率直な感想は、(良くも悪くも)早くて軽いという感じ。

原作の一話を10分余りでまとめていて(30分で二話ずつ放送)、そのためテンポが早い。ちょっと早すぎるような気もするが、原作は基本的に一話完結なので、このくらいの長さ(短さ)でいいのかもしれない。

絵も旧作より明るくポップな感じだ。(ラムちゃんも旧作よりかわいい)

ただなんとなく雑な感じがしなくもない。

まあ、まだ2回しか見ていないし、主要なキャラクターも出揃っていないので、もう少し様子を見たい。(なんか偉そうですいません)

 

それから、作品の出来不出来とは関係なく感じたのは、これはやっぱり「昭和」の作品なんだなということである。

例えば下の画像を見ていただきたい。

 

 

これは主人公の諸星あたるがガールフレンドのしのぶに電話をしている場面なのだが、この昭和感がなんともいえない。

まず目につくのがダイヤル式の黒電話である。しかもカバーまで付いている。

生まれた時から携帯電話があった世代はこの時点で違和感を感じるかもしれない。

話の都合上、一階にある電話を二階の自分の部屋に引っ張ってきているのだが(そんなにコードが長いはずがない)、昔は家族の共有スペースで周囲に気を配りながら電話をしていたものだ。

それから机の前の壁にはペナント。(三角形のやつね)

念のために説明すると、ペナントというのは三角形の布に刺繍などを施した旗状の記念品である。観光名所の土産物屋などで売っていて、旅行の記念に自分で買ったり、お土産でもらったりした。

机の上の手動の鉛筆削りやアームの長い電気スタンドは今もあるかな。それから窓の左下にある円筒形のものは、たぶんスチール製のゴミ箱だろう。

この他のカットではファンシーケース(ハンガーラックの周囲にビニール製の覆いをつけた簡易家具)も見えた。

こういう小物がいちいち昭和を感じさせる。

 

うる星やつら』の漫画連載は昭和53年(1978)から昭和62年(1987)まで9年にわたる。(旧作アニメの放送は昭和56年(1981)から昭和61年(1986)まで)[注]

これは私の9歳から18歳までにあたり、要するにほとんど10代である。そりゃあ懐かしくもなる。

もっとも当時の私は『ジャンプ』系の漫画しか読んでなくて、ほとんどアニメでしか知らなかったけれど。

 

そもそも今回の再アニメ化を喜んでいるのは、(私も含めて)旧作のアニメを見たり原作の漫画を読んだりして、すでに『うる星やつら』を知っている世代の人がほとんどではないだろうか。

そういう世代を狙っての再アニメ化なのかもしれないが、今回初めて『うる星やつら』の世界に触れるような若い人たちは、この作品を見てどういう感想を持つだろう。ちょっと聞いてみたい気もする。

 

それにしても10代の頃の私は、50歳を過ぎた自分がいまだに漫画やアニメを見ているなんてーーなんなら当時よりも熱心に見ているなんて、思ってもいなかっただろうなあ。

スマンね、昔の私よ。

こんな大人になっちゃって。

 

[注]本格的な週刊連載は昭和55年から。それまでは作者が学生だったため不定期連載だった。