何を読んでも何かを思いだす

人生の半分はフィクションでできている。

本と引っ越し

 

私はこれまでに2回引越しを経験した。

1回目は大学進学のために実家から一人暮らしのアパートへの引っ越し。

2回目はそのアパートを引き払って実家に帰った時の引っ越しである。

 

こう書くと大学卒業と同時に普通に地元に戻ったように見えるが、私は卒業後もずっとそのアパートに住み続けていたので、1回目の引っ越しと2回目のそれとの間には実に20年の隔たりがある。だからその2回の引っ越しは内容がぜんぜん違う。

一番の違いはなんといっても本の量である。

最初の引っ越しでは辞書などを数冊持ってきただけだったが、その20年の間に私は「本を買う人」になっていたので、2回目の引っ越しはたいへんだった。

 

当時住んでいたアパートは6畳と4畳半(台所)の二間だったけれど、4畳半の方は火に近いのでさすがに本は置けず、6畳の方にだけ置いていた。

その6畳の真ん中には布団(万年床)が敷いてあって、その布団を取り囲むようにしてうずだかく本の山脈が築かれていた。まるで「布団盆地」である。

それは見様によっては何かの墓所のようにも見えた。

とにかくこの本をどうにかしなければ引っ越しもなにもあったものではない。

 

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さすがにその本を全部実家に持って帰るわけにもいかないので、結局私はその7割ぐらいを処分することにした。

幸い近くにブックオフがあったので、日時を決めて引き取りに来てもらうことになった。それからは本の選別と箱詰めの日々である。あまり大きな箱を使うと重すぎて持てなくなるので、小さめの箱をいくつもつくった。

 

そして7月の暑い日、ブックオフの店員さん2人がミニバンに乗ってやって来て、本の詰まったダンボール箱を運び出してくれた。

ちなみにそのアパートは3階建てで、私の部屋は3階である。当然エレベーターなどという気の利いたものはない。箱がいくつあったのかは覚えていないが、(私を含めた)全員で階段を何回か往復しなければならなかった。本は重い。全員汗だくだった。2回往復した時点で店員さんから笑顔が消えた(ような気がする)。

どのくらい時間がかかったのか、そうやって苦労して車に本を運び込み、査定結果は後で連絡するということで店員さんは帰っていった。2人ともぐったりしているようだった。なんかすいません。

 

さて、これでようやく引っ越しの準備の、その前の段階が終わったわけだ。

ここからが本当の引っ越しなのだが……それはもういいか。

 

今週のお題「引っ越し」