何を読んでも何かを思いだす

人生の半分はフィクションでできている。

共産趣味

 

誰がつくったのかは知らないが共産趣味という言葉がある。

「主義」じゃないですよ。あくまで「趣味」。

ちゃんとした説明はWikipediaに丸投げするとして、私が理解している範囲で言うと、これはつまり、共産主義や左翼思想などを真面目に研究するのではなく、それを茶化したりネタにしたりしておもしろがることである。それからまた、ソ連や昔の東欧のいわゆる「東側」諸国の文化や事物に興味を持っていろいろ調べたり、グッズを集めたりすることも含まれる。

まあ、ゆる〜く共産主義や旧共産圏に興味を持っている人と言えるかもしれない。

 

ja.wikipedia.org

 

実は私にも少し「共産趣味」の傾向があって、だいぶ前からソ連や旧東欧のことが気になっている。もっとも私の場合は文化面に限ってのことだが、なぜそれに興味を持っているのか、自分でも理由はよくわからない。

 

私が子どもの頃、世界は大きく二つに分かれていた。

アメリカを中心とする資本主義の「西側」と、ソ連を中心とする共産主義の「東側」である。いわゆる「冷戦」の時代だ。(本当はもっと複雑だが)

もちろん子どもが難しい国際情勢を知るはずもなかったが、しかし、子どもにでもわかる大きな事件もあった。1980年、モスクワオリンピックへのアメリカと西側諸国のボイコット(参加拒否)である。日本も西側の一員として参加しなかった。(西側で参加した国もあった)

ソ連軍のアフガニスタン侵攻に対する抗議の意味があったというのはもちろん後年知ったことで、当時は、なぜみんなが楽しみにしているオリンピックに参加しないのだろうと不思議だった。さらに4年後、その報復として、今度は東側諸国がロサンゼルスオリンピックをボイコットして事態はいっそう険悪になった。

そういう事件を目の当たりにして、子どもなりに、世界は思っていたほど平和ではないのかもしれないとぼんやりと感じた。

 

しかしそれから10年と経たない1989年、東西冷戦の象徴ともいうべき「ベルリンの壁」が取り壊され、1991年にはソ連が解体される。

さすがにこの頃には少しは国際情勢がわかる歳になっていたので、ゴルバチョフの「ペレストロイカ」のことなどは知っていたが、こんなに急激に(と私には思えた)世界が変動するとは思ってもみなかった。まさか自分が生きているうちにソ連が消滅するとは……。

そして現在に至るわけだが、冷戦が終わったからといって世界が平和になったわけではないことはご存知の通り。

こうして振り返ってみると、今私が昔のソ連や東側諸国のことに興味を持つというのは、すでに「歴史」になったもの、失われた過去に対するノスタルジーの一環なのかもしれない。

 

もっとも興味を持つといっても本格的に勉強しようというのではなく、ちょっとおもしろそうな本をつまみ読みするぐらいのことだ。

たとえば今読んでいる(というか、眺めている)本はこちら。

伸井太一『ニセドイツ1』社会評論社、2009)

 

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共産趣味インターナショナル》という魅力的なシリーズの一冊。

「ニセドイツ」というのは「東ドイツ」のことで、当然「西ドイツ」に掛けた駄洒落である。

この本では東ドイツ製の工業製品(自動車、バイク、家電など)を紹介している。東ドイツを代表する国民車トラバンテなんか、今見ると(一周回って?)レトロでちょっとオシャレに見えなくもない。

 

……と、こんな感じでゆるく興味を持っているのだが、そのうち感化されて、読者のみなさんのことを「同志!」と呼ぶようになるかも……。

 

今週のお題「赤いもの」