何を読んでも何かを思いだす

人生の半分はフィクションでできている。

『本の雑誌』への感謝

 

私は普段ほとんど雑誌を買わないのだけれど、一つだけ毎月欠かさず買っている雑誌があって、それが本の雑誌だ。

最初に買ったのは確か二十歳ぐらいのときなので、もうかれこれ30年の付き合いになる。その間、本当に金がなかったときの数回を除いて毎号買っている。

その『本の雑誌』が今年で45周年、12月号で450号の刊行になった。

おめでとうございます。

 

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本の雑誌』は椎名誠目黒考二などを中心に1976年に創刊された雑誌だ。

当初は書評(エンタメ小説が多い)を中心にしていたが、エッセイやコラムも充実し、ときどき本にまつわる変な企画をやったり、要するに、本とその周辺のことをなんでも詰め込んだような雑誌である。

創刊、および「本の雑誌社」設立当時のことは、目黒考二本の雑誌風雲録』や椎名誠本の雑誌血風録』といった本に描かれているので、興味がある人は(探して)読んでもらいたい。(おもしろいですよ)


本の雑誌』に出会った頃の私は、多少は本を読んでいたけれど、特別に本や読書が好きというわけでもなかった。

本は何かを学ぶために読むものであり、試験やレポートなどのために必要があって読むものだった。小説などのフィクションも同じで、そこから「人生論」的なものを学ばなければならないと思っていた。

だから必要以上には本を読まなかったし、ましてや必要以上に買うこともなかった。(いまの私に聞かせてやりたい)

 

そんな私が大型書店で(小さな書店にはなかったので)たまたま目にした『本の雑誌』に興味を持ったのは、たぶん「変わったタイトルだな」と思ったからだろう。

なんの気なしに買って帰り、読んでみた。

そこになにが書かれていたのか、いまとなってはまったく覚えていないが、

(なんだか楽しそうだな)

と思ったのは覚えている。

記事の内容はよくわからないながら、それを書いている人たちが、本というものを心から楽しんでいるのが伝わってきた、ような気がした。

その楽しそうな雰囲気に惹かれて、次の号も買って、また次も……。

 

あれから30年……。

いまでは馬鹿みたいに本が好きになってしまった。 

正直に言えば、『本の雑誌』で紹介された本を買ったり読んだりしたことはそんなに多くない。

もっと正直に言えば、いまでは昔ほど『本の雑誌』を楽しめていないような気もする。誤解のないように補足すれば、それは『本の雑誌』がつまらなくなったのではなく、私がその楽しさに慣れてしまったからだ。残念ながら、人間はどんな楽しいことにも慣れてしまう。

しかし、それでも私が『本の雑誌』を買い続け、読み続けているのは、そこに昔と変わらないメッセージを感じるからだ。

そのメッセージとは、

 

本の世界はどこまでも広く、どこまでも楽しい

 

ということ。

それが感じられるかぎり、私はこれからも『本の雑誌』を買い続けるだろう。

 

本当なら、こんなことは「三角窓口」(『本の雑誌』の読者投稿欄)にでも投稿すればいいのかもしれないが、それだとなんだか照れくさいので、このブログにこっそり書いておくことにする。

 

ありがとう『本の雑誌』。

これからもよろしく。

 

今週のお題「感謝したいこと」