春になった。
人間の世界は新型コロナウィルスのために沈滞ムードが漂っているが、そんな人間界をよそに動植物は活動を活発にする。
というわけで、うちの庭でも雑草の成長が目立ってきた。今年もまた雑草との闘いが始まるのだ。(実際は闘わずに不戦敗なのだが)
その庭の一画で、いまじわじわと勢力を拡げつつあるのがこの雑草。
画像ではちょっと形がわかりにくいが、紅紫色の花をつけるこの草はカラスノエンドウ、だと思う。
(植物学的にはヤハズエンドウ[矢筈豌豆]という名前が標準的に用いられるが、一般的にはカラスノエンドウという名前の方が定着しているらしいので、この記事でもそちらを使う)
花よりもむしろ葉っぱの形状の方が特徴的だ。
ちなみにカラスノエンドウは「烏の豌豆」ではなく「烏野豌豆」 と書く。ソラマメの仲間だ。
いまはまだ時期が早いが、しばらくするとマメ科の植物らしく豆(種)が入った「さや」をつける。そのさやが成熟すると黒く色づくところから「カラス」の名前がついたとも言われる。(異説あり)
古代には食用として栽培されていたらしいが、現在では広く自生する雑草になっている。もっともいまでも若葉やさやを摘んで食べる人がけっこういて、「カラスノエンドウ 食べる」で検索すると食べ方を解説した記事を多く見ることができる。
ところで、このカラスノエンドウの類縁種にスズメノエンドウ(雀野豌豆)というのがある。
一見するとカラスノエンドウと同じようだが、全体的に丈が低くて花も小さい。(ほかにも見分け方があるが割愛する)
名前の由来は、カラスよりも小さいからスズメ……。このネーミングの適当感がいい。雑草の名前にはこういう適当というか、素朴なものが多いような気がする。カラスもスズメも人間の生活圏にいる鳥だから、名前に使われやすいのだろう。
もうひとつよく似た類縁種にカスマグサというのがある。これはカラスノエンドウとスズメノエンドウの間ぐらいの大きさらしい。つまり、
カラスノエンドウ(大)
カスマグサ(中)
スズメノエンドウ(小)
という関係になる。しかしなぜカスマグサだけ名前のタイプが違うのか?
実はカスマグサの「カスマ」とは「カ」ラスと「ス」ズメの間(マ)という意味なのだ。
て、適当……。それはいくらなんでも扱いがぞんざいすぎやしないか?
よくできた長男と、かわいい末っ子の間のどうでもいい次男みたいな……。
せめてハトノエンドウ(仮)とかにしてあげて。