何を読んでも何かを思いだす

人生の半分はフィクションでできている。

寝るより楽はなかりけり

 

最近、休日の起床時間がだんだん遅くなっている。

寒くなってきたことに加えて、いま仕事がきつい時期なのでその疲れが出ているのだと思う。

今日も8時過ぎに目が覚めたが、そのままうつらうつらと布団の中にいて、10時ぐらいにトイレが我慢できずにしかたなく起きあがった。尿意がなければ昼過ぎまで寝ていたかもしれない。

 

こんな時には、祖母がときどき口にしていた言葉を思い出す。

 

世の中に寝るより楽はなかりけり いかなる阿呆が起きて働く

 

まことにもっともである。

しかし、そう言っていた祖母は子どもの時からずっと働き詰めの人だった(らしい)。

昔の田舎の農家のことだから、子どもも学校より家の仕事を手伝うことの方が大事とされていた。特に「女に学問など必要ない」という風潮だったので、祖母も学校に行くより子守や家事に忙しかったようだ。そのため「読み書き」の読む方は人並みだったが書く方は不得手で、祖母はそのことをずっと恥じていた。

そういう祖母が上のように言うのだから、言葉に重みや厚みがある。

私が同じように言っても、怠け者の戯れ言にしか聞こえないけれど。

 

この言葉が気になってネットで検索してみると、こんな狂歌が出てきた。

 

この世には寝るより楽はなかりけり 浮世の馬鹿が起きて働く

 

江戸時代後期の才人・太田南畝(蜀山人)の作とも言われているが、特定はできないようだ。(「寝るほど」としているものもある)

他にも似たような内容の狂歌があったが、これが一番ポピュラーなようである。

昔はオリジナリティに対する考え方が現代とは違っていただろうから、誰の作ということもなく広く流布して、その過程でバリエーションができていったのではないかと思う。祖母が覚えていたのも、そうしたバリエーションの一つだろう。

まあ、いずれにしても、起きて働くのは馬鹿か阿呆ということですな。やれやれ。

 

そういうわけで(?)私もまたちょっと横になりたいところだが……。

 

寝るよりも楽はなしとはいうものの 腹が減っては寝てもいられず

 

何もしなくても腹は減る。

さて、飯でも炊くか。