『絵葉書を読む』第4回。今回の絵葉書はこちら。
『東北風土記 東北娘独特の風俗「エヅコ」』
写真の部分を拡大したのがこちら。
この赤ん坊がすっぽり入っている籠のようなものが「えずこ」(えづこ)である。
赤ん坊を寒さから守るためのもので、稲わらを編んで作られている。
東北地方全般に見られたものらしいが、名前が地域によって多少違っていて、「えじこ」「いじこ」「いずめこ」「えんづこ」などとも呼ばれている。
昔は(東北の)どこの農家にもあったが、1950年代の後半ぐらいから見られなくなっていったという。
古い絵葉書には、こうした現代では失われた風習・風俗が描かれているものもあって興味深い。
ちなみに山形県の庄内地域の鶴岡市には「いずめこ人形」という工芸品かがあって、その姿を現代に伝えている。
鶴岡市の「いずめこ人形」(画像はウェブサイト「山形県ふるさと工芸品」から借用)
それでは表の通信文を読んでみよう。(旧字は適宜改めた。□は読めなかった文字)
既に御承知の「エヅコ」を御紹介致します。
秋田市へ参りました。この夏には版画のなかなかよいのがあり(絵葉書)ましたので、探しても、一寸やそっとでは今は見[つ]かりも致しません。
これから□□へ廻ります。車中、倉田氏、農の民俗学を読破したいと思って見て居りましたが、十頁程□□進行度です。
「国光」が□しく車窓へ飛び込みました。匆々。
秋田ー大館間 車中にて
差出人は秋田に来ていて、そこでこの絵葉書を買い求め、移動の車中で書いたものらしい。(国光〔こっこう〕はリンゴの品種のことだと思うが、読み違いかもしれない)
興味深いのはこの葉書の宛先だ。「東京都西ヶ原町」にある「農事試験場」の某様宛になっている。
農事試験場は、現在でいう農業試験場であり、農作物の品種改良や効率的な農法などを研究するところである。おそらく宛名の某氏はそこに勤めている人なのだろう。そういう職業柄、地方の農村の風習・風俗にも関心を持っているのではないだろうか。
差出人も『農の民俗学』などという本を読むくらいだから、なにか農業に関係した仕事をしているのかもしれない。
なんとなくのんびりとした内容の手紙だが、消印の日付は昭和19年11月9日。
絵葉書の表には、目立たない小さな薄い字ではあるが、「国策に副ふて備へよ 身と心」というスローガンが印刷されている。
(「えずこ」に関しては 酒井惇一氏による下記のコラムを参照させていただいた)
子守用のわら工品・「えずこ」【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第100回|昔の農村・今の世の中|コラム|JAcom 農業協同組合新聞