また北原尚彦さんのホームズ本を読んでいる。
北原尚彦『シャーロック・ホームズ秘宝館』(青弓社、1999)
ただし、前回の『初歩からのシャーロック・ホームズ』がホームズ紹介の「王道」だとすれば、この本は、なんというか、ほとんど人が通らない「裏道」みたいなものだ。「秘宝館」と言うにふさわしく、一風変わったホームズ関連本(グッズ)が集められている。
北原さんはホームズ研究家なのだが、ホームズに関連するものなら(たぶん)なんでも集めるコレクターでもある。その蒐集はバラエティに富んでいる。
ホームズほどの有名キャラクターになると、小説だけでなくさまざまな媒体(漫画、映画、ゲームetc.)に登場している。
その登場の仕方もいろいろで、「シャーロック・ホームズ」本人がそのまま登場するだけでなく、ホームズもどき(シャイロック・ボトムズとか、そんな感じの)として登場することも多いし、またほかのキャラクター(ミッキーとかマリオとか)がホームズ風の衣装を着て登場するパターンもある。ホームズ風とは、要するに、ディアストーカー(鹿撃ち帽[下図])をかぶって、インバネスコートを着て、手に虫めがねやパイプを持った格好のことだ。
こういうものがすべて蒐集の対象になる。
この本では、その蒐集品の中からとくに変わったものが紹介されている。
バットマンと共演しているアメコミや、ホームズとワトソンのBLコミック、子ども向け学習雑誌の付録、お蔵入りした(未制作の)B級映画のシナリオ、さらには生命保険会社のパンフレットなどなど。いったいどこから見つけてくるのかと思うものばかりだ。
もちろん海外からも購入している。あちらにはホームズ関連専門の古書店(ミステリー専門ではなく、ホームズ専門)まであるという。
なんのジャンルであれ、ディープなコレクターの世界というのはすごい。
たとえば普通の人は、ここで紹介されている(ネイティブ・アメリカンの)ナバホ族の言語で書かれたホームズ本を見て、「そんな読めない本を買ってどうするの?」と考えると思うが、コレクターはそんなことは考えない。考えるより先に「欲しい!」と思ってしまうんだろうなあ。
なぜそんなものまであるかは問わないでほしい。本の形をしていてホームズに関係があれば、なんでも買ってしまうのである。(p.84)
コレクターの世界は奥が深いというか、業が深いというか……。