何を読んでも何かを思いだす

人生の半分はフィクションでできている。

結婚の条件

 

また婦人雑誌の付録を買ってしまった。

今回のはずっと時代が新しく、昭和40年代のものなのだが、そのテーマがおもしろい。

婦人公論』8月特別号付録『全国一流企業150社 独身男性情報』(1972)というものだ。

 

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結婚生活は愛情だけではやっていけない。経済的な裏付けが必要だ。そのためには、(将来の)結婚相手がどんな会社に勤めているかを知る必要がある--というのが、この小冊子の趣旨だ。

本文では、1ページにつき1企業が紹介されていて、まずは会社の概要や社風、大卒初任給や各種の手当、福利厚生などについて細かく記述されている。欄外にも給与や労働条件の基本データ、なぜか社員食堂の定食の値段まで記載されている。

 

さらに若い男性社員へのインタビューもあって、そこでは彼らの結婚観や女性観などが語られているのだが、これがなかなかおもしろい。

例えば「旭化成工業」に勤める独身男性社員E氏(東京本社プラスチック事業部勤務29歳)はこんなことを言っている。

 

年齢的にそろそろとは思ってるけど、なにしろ、食わせられなきゃあね。理想の女房像? なんたって、丈夫で長保ちする、鷹揚な女性‥‥。サラリーマンの女房はこの一言につきますよ。ベタついたホレ方はする必要ないと思うけど、アキの来ない程度の好きさ加減があれば‥‥ハハ。

 

なんかすごい上から言ってるなあ。いまこんな言い方したら炎上必至のような気がする。

また、「主婦の友社」の独身男性社員I氏(生活課勤務24歳)は、

 

まず、ウーマン・リブ的女性は絶対にいやですね。自分の信念は持っていて、それでいて、だまって男を立ててついてきてくれる女が理想。真に男と同等をいうなら、主体性をなくさず、黙って静かにいつの間にか、なんでもやっているような女‥‥

 

などと、都合のいいことを言っている。 さらに「緑屋」という会社(店?)の独身男性社員I氏(伊勢佐木町店勤務24歳)にいたっては、

 

 結婚? というよりもそもそも女という存在ですけどね、女は男のためにあるというのがボクの持論なんですよ。仕事は完全に男の世界ですからね、女はそれ以外のところで男に仕えるもんだと思うんです。

 

わ、私が言ってるんじゃないですよ。文句はI氏に言ってください。

まあ、上の引用はちょっと極端な発言を選んだのだが、時代の雰囲気というものが伝わってくる。

 

結婚相手の会社のことをあれこれ調べるというのは、現在から見ればいささか打算的すぎるようにも思える。しかし当時と今とでは、家庭にとっての会社の「重み」が違うような気がする。会社への依存度が高いというか。

こういう婦人雑誌の企画を見ると、当時の女性にとって結婚相手の会社というのは現在よりもずっと重要な結婚の条件だったのではないかと思う。