昔、私が高校生の頃、学校の近くにアーケードの商店街があって、そこに一軒の本屋があった。
商店街自体がそう大きなものではないので、その本屋も小さな個人経営の店だったが、学校の近くということで私もときどき帰りに寄って本を買ったりしていた。
もっとも、当時はいまのように本が好きというわけではなかったので、買ったのは参考書や問題集などが多かった。たまに暇つぶしのために読む文庫本も買った。2、3回だけ、私服の時に、ちょっとエロい本も買ったかな(ソフトなやつです)。いまから考えると、よくもまあ学校の近くの本屋でそんな本を買ったものだ。若気の至りというやつか、まったく。
私の在学中はまだ店があったと思うが、大学に入って地元を離れている間になくなっていた。いまではアーケードも撤去されて、店は何軒か残っているが、もう商店街の形は成していない。
私の部屋にある当時買った本には、その店の書店カバーをつけたままのものが何冊かあり、いまではその色褪せたカバーと記憶だけが、その店が存在したことの証になっている。
ちなみにカバーがかかっていたのは赤川次郎の本だ。80年代だなあ。
もう何年も前から、大型書店に押されていわゆる「町の本屋」が消えていると言われてきた。
しかし、現在はその大型書店も苦戦していて、本屋自体が減少している。
少し古い記録だが、2017年のトーハンの調査によると、全国の自治体(市町村)のうち約2割には本屋がないという。「市」に限っても、7つの市には本屋がないらしい。(2017年当時)
現在、私が住んでいる市には新刊書店が2店ある。
どちらも九州に本店がある書店のチェーン店で、規模はあまり大きくない。
いわゆる(活字の)本に関していえば、残念ながら、私が欲しいと思うようなものはあまり入ってこない。そういう本は、以前は隣の市にある大型書店まで行って買っていたのだが、最近ではもっぱらネット書店を利用している。
だから頻繁に利用しているとは言いがたいが、雑誌や漫画はだいたいこの地元の本屋で買っているので、間違いなく重宝はしている。
もしこの本屋がなくなったらと思うとゾッとする。
大型書店が何店もひしめいているような都市で暮らしている人には、この危機感はピンとこないかもしれない。
また、実店舗でもネット書店でも、必要な本が手に入るのならそれでいいじゃないか、という意見もあるだろう。それが時代の流れだ、と。
しかし、私は本屋という場所の存在感が大切なのではないかと思う。
実際の利用頻度とか品揃えがどうとかいう以前に、地元に本屋があるということは、そこに住む者に安心感を与えているような気がする。(私だけか?)
「買い支え」というほど大きな力は私にはないけれど、もう少しこの本屋を積極的に利用したいと思っている。
自分が住んでいる町から本屋がなくならないように。