何を読んでも何かを思いだす

人生の半分はフィクションでできている。

さよなら、孔雀

 

仕事から帰ってネットを見たら、いきなり『孔雀王』の荻野真さんの訃報にぶつかった。

 

www.oricon.co.jp

 

孔雀王』は、裏高野の「退魔師」孔雀が、密教で得た力を使って妖魔を倒し、仲間と共に世界を救う物語だ。(大雑把!)

ヤングジャンプ』に連載されていた。

 

f:id:paperwalker:20190511005657j:plain

 

私が初めて『ヤングジャンプ』を読んだのは、大学に入学する前後のことだったと思う。まさか、大学入学→大人になる→青年誌と考えたわけではないと思うが(そこまで単純ではない、たぶん)とにかくその頃だ。

その時『孔雀王』は、裏高野で孔雀と鳳凰が対決しているあたりだったと思う。

ずいぶんグロくてエロい漫画だな、と思ったけれど、私はその壮大な物語に魅了された。神話、宗教、民俗学といった諸学の知識を駆使して超常の戦いを描くその漫画は、まだ学問のなんたるかも知らない若僧にはとても魅力的だった。そして簡単に影響された。

クラスのコンパのときだったか、若僧は調子に乗って、つい、仏教に興味がある、などと口走ってしまい、近くにいた先生に何か質問されたのだが、「いえ、その、漫画で読んで……」と答えてすごく顰蹙を買った。まあ、今となってはいい思い出……でもないか。やっぱり恥ずかしい。

とにかくコミックスの既刊を買い揃え、連載を楽しみに読んでいた。

物語が完結しても何度も読み返した。

 

それから数年して、続篇の『孔雀王  退魔聖伝』が始まった。

前作からかなり時間が経っていた(その間別の作品を連載していた)ので、絵がずいぶん変わってしまってとまどったが、それでもやはりおもしろかった。

ところが、日本神話に関わるあたりからどうも雲行きが怪しくなる。

読んでいるこちらにも、作者の苦心というか、描きにくさが伝わってくるようだった。日本神話自体が複雑なせいなのか、それとも何か別の理由なのか、とにかく描きにくそうだった。

結局『退魔聖伝』は中途半端なところで終わってしまう。

 

さらに時間が経って、続篇の『孔雀王  曲神(まがりがみ)紀』が始まった。

今度は最初から日本神話をテーマにしていた。しかし、やはりどこか描きにくいというか、難航しているような感じがした。

今度は一応完結はしたものの、どこか不完全燃焼のような印象を受けた。

 

今連載されている『孔雀王ライジング』や『孔雀王  戦国転生』には、もう昔ほどの熱意は持てなくなっている。(読んでるけど)

 

そこに今回の訃報だ。

驚きのあまり、その勢いでこのとりとめのない記事を書いた。

結局一番よく覚えていたのは、一番古い最初の『孔雀王』だった。けっこう細かいことまで思い出した。

ついでに、それを読んでいた頃のことも少し思い出してしまった。

あの、時間と自分自身を持て余していた日々を。

 

最後になりましたが、心からご冥福をお祈り申し上げます。

合掌。